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12.コンパイルと Makefile / Imakefile

　Xのプログラムをコンパイルすることは、他のプログラムを作ってコンパイル することと大差はありません。私自身、最初にXのプログラムをコンパイル したときは、xmkmf や make は、使わずに直接コマンドラインから"cc …" と入力してコンパイルしました。

◇◇ Xのコンパイル ◇◇

Xのプログラムをコンパイルする場合は、インクルード・ファイルの ディレクトリやライブラリの指定が必要なことが多いようです。 　ちなみに xwireless は、私の環境では、以下のように入力すること でコンパイル可能です。  cc xwireless.c -o xwireless -lXaw -lXmu -lXt -lXext -lX11  　以下のオプションが必要なときもあります。 -I/usr/X11R6/include,-L/usr/X11R6/lib ※ これらのオプションは、man cc などでコンパイルオプションを確認ください。

 

　コンパイルするファイルが、1つのときは、これでもいいのですが、数が多 くなると面倒になり、また時間がかかるようになります。

 　面倒な作業は、bash や tcsh の入力のしやすさから気にならないかもしれ ないし、スクリプトにすれば解決する問題です。しかし、スクリプト化では、 既にコンパイルしていて再コンパイルの必要がないファイルまでコンパイルし てしまい無駄な時間がかかってしまいます。

 

• make と Makefile

　make は、Makefile に記述された依存関係を元にコンパイルを自動化する ツールです。コンパイル以外への応用も可能です。

 

• xmkmf と Imakefile

　xmkmf は、Imakefile の記述と環境にあわせて、Makefile を作ります。
　これは、環境によるコンパイル方法の差など Makefile だけでは、 解決できない(あるいは、困難な)問題があるためです。
　Imakefile の記述については、色々なソフトについている Imakefile を ながめるといいと思います。

 　個人の環境だけの場合は、Makefile だけでも十分となりますが、うまく行 かないときなどは、xmkmf で自動的にコンパイルした場合のオプションを調べ てみると良いかもしれません。

13.Xのグラフィックスとメソッド

　一般にコンピュータの画面への描画は、点,線,矩形(長方形),円,文字 などを描く処理で実現されている。複雑な絵も、これらの組み合わせとなります。
(線,矩形,円,文字も点の組合せで出来ている)

　このことは、Xでもかわらない。しかし、XなどのGUI環境では、すでに 描いたウィンドウやその内部の絵などが、他のウィンドウで覆い隠されたりなどして、いつ消去されるかわ からない。
 

Windowの移動

　そして、隠されていた部分がそのウィンドウの移動などで、いつ表示される ようになるかわからない。
　このような場合Xでは、再描画が必要なことがアプリケーションに対して (先に述べたイベントで)知らされて、それに応じて、アプリケーションが 再描画を行うことで処理される。

　しかし、今まで説明してきた xwireless や vwireless にこの部分を処理 するコードは、書かれていない。これは、ウィジェット内にその機能があり、 ウィジェットが自動的に再描画を行ってきたためです。

• Expose イベント

　このような再描画は、ウィジェットでは、自動的行われていると述べました。 では、実際にどういうときに再描画が行われるかというと描画が必要なことが Xからイベントとして通知されたときです。

 　このイベントを『Expose イベント』といいます。
(この動作は、Xlib ベースのプログラムを見るとよくわかると思います。)

• expose メソッド

　ウィジェット内で『Expose イベント』を処理する部分が、『expose メソッド』 です。expose メソッドは、個々のウィジェットかんする情報などと Expose イベントを受けて、(再)描画を行います。

 

メソッドとは

ウィジェットには、初期化/描画/サイズ変更/属性設定/破壊などの 内部処理を行うための様々な処理ルーチンが用意され使われています。 このような処理をメソッドと言います。 ここでは、そのうち『Expose イベント』しか紹介しません。

 
　"X Toolkit+Athena Widget"だけを利用する場合、再描画は、自動的に 行われる。その反面、複雑な処理が要求されるなグラフィックを取り扱うこ とには、向いていません。

14.その他の技法

　ここでは、xwireless および vwireless では、使っていない技法について 少しだけ触れます。

 

• シェルとメニュー

　1つのアプリケーションでは、1つ以上の(最上位)ウィンドウを開く ことができます。そのための特別な、ウィジェットのことをシェルと言い ます。シェルは、アテナ・ウィジェットのウィジェットではなく、Xツー ルキットのウィジェットです。メニューに関しても、このシェルを利用し ています。
　なお SimpleMenu は、Sme/SmeBSB/SmeLine を使う特別な構成になってい ます。

 　 　参照事項:TopLevelShell, TransientShell, SimpleMenu

 

• ファイルI/O

　Xツールキットを使用している場合でも、fopen() や fprintf() など のC言語の標準関数は使えるので、これを利用することも可能です。
　ただし、通常のアプリケーションのように長い間、入出力だけを行うと Xのボタンの処理や再描画などが行われなくなってしまい、プログラムが 暴走したのではとさえ思われるときがあります。
　Xツールキットでは、ファイルの入出力が可能になったときだけ、あら かじめ指定された処理(コールバック関数)を行うようにすることができ るので、この機能を利用するとよいでしょう。

 　参照事項:XtAppAddInput()

• 一定時間おきの処理

　Xでの処理の流れは、ボタンが押されたなどのイベントによって動きま す。つまりそれまで、イベントを待ち続けているのです。
　このとき時計やゲームのように一定時間おきに何かがおこる処理が必要 な場合、コールバック関数が呼び出されます。

 　参照事項:XtAppAddTimeOut()

 

• 空き時間に処理する

　GUIアプリケーションでは、プログラムが何らかの処理にかかりっき りになり、ボタンなどの反応が鈍くなる問題がおこりやすい。
　このようなことは、望ましくなくイベント待ちなどのあまり処理をしな い時間を利用して、これらの処理を行い負担を軽くすると言うことも考え られます。
　このような処理を登録しておくと、空き時間にコールバック関数が呼ば れ、一時に集中する重い処理を軽くすることができます。
　ただし、むやみに使うとシステム全体の負荷を大きくしてしまうことも あります。

 　参照事項:XtAppAddWorkProc()

 

15.国際化について

　xwireless および vwireless は、国際化されていません。

　国際化がされているなら、以下のようにすると表示されると思います。

.profile, .bashec/ .cshrc, .login 等で以下の表のようにして

シェルの種類	設定方法
B-Shell系のシェル (bash のみ)	LANG="ja_JP.eucJP";export LANG (export LANG="ja_JP.eucJP")
C-Shell系のシェル	setenv LANG "ja_JP.eucJP"

LANG 環境変数を設定してください。 　なお、設定する値は、以下のなかから選択してください。

コード体系	地域名
EUC	ja ja_JP ja_JP.ujis ja_JP.eucJP Jp_JP ja_JP.AJEC ja_JP.EUC
シフトJIS	ja_JP.SJIS ja_JP.mscode
JIS	ja_JP.ISO-2022-JP ja_JP.JIS ja_JP.jis7

　ソースの main() の先頭に以下の行を追加してください。

 

XtSetLanguageProc(NULL, NULL, NULL);

リソースファイルに以下のような行を追加してください。

*international: True *fontSet: -misc-*-*-R-*-*-14-*-*-*-*

　X11R6 のばあいは、international と言う国際化を示すリソースを TRUE に してください。

 　わたしは、自分の好みで、アプリケーション・デフォルト・ファイルの "fontSet"リソースで2つのフォントを指定しているところが多くありま す。このような設定になっているときは、半角の英数字などのコードが、 JIS X0201-1976 と若干異なっているため、一部のフォントが異なってしま います。

 

注意すべき文字コードの例

	JIS X0201-1976	iso8859-1 (Latin-1)
"\"(0x5d)	円記号	バック・スラッシュ
"~"(0x7e)	オーバーライン	チルダ

　これが、まずい場合は、最初のフォントの指定をはずして以下のようにし てください。(以下の例は、14ドットフォントのとき)

*fontSet: -misc-*-*-R-*-*-14-*-*-*-*

国際化アプリケーションの例として、本ドキュメントで題材とした xwirelwss を機能強化 & 国際化したものを XawTownsDoc/xwireless に収録しています。

 

16.補足

このドキュメントは、転載自由です。

 テキスト版のドキュメントも存在しますが、こちらの HTML 版を基準に 修正を主ないます。

17.Special Thanks To

　今回、例題につかわせていただいた。ワイヤレスコマンダ・ドライバ の開発を行われた、マシーンMさんに感謝します。

18.最後に

　私は、典型的な理系のタイプなので、文章を苦手としています。
　実際、「お前が書くと、簡単なことまで難しくなる。」と言われたこともあるので、 本ドキュメントが難しく感じられてもXのプログラミングが難しいとは、限りません。

　なお、ご意見、ご希望等ございましたら、お聞かせください。
　上記の理由から、ご理解頂けない点は、ご自身にあると思ってはいけません。 「それは、筆者に問題があるからだ!!」と思っていいです。

　「これでは、筆者に任しておけない」と言うところまで思わなくても、 「ちょっと、書き加えたいことがあるんだけど」って方は、遠慮なく書き加 えてください。最終に更新した方は、『いつ』,『誰が』変更したものか明記 してください。たとえば、AT用の情報を加筆して、TOWNS/AT兼用に するなど。

　しかし、それは、伝えてもらわないと直せないので、なにとぞ、よろしくお 願いします。(誤字脱字/誤変換も多いと思います。)

　なお、添付ソフトウェアを使用されて、誤操作やバグなどで、被害・損害を 受けられてもなんら保証できません。
　添付ソフトウェアは、GNUのGPL扱いとします。

丸市　展之 (Nobuyuki Maruichi)

NIFTY-Serve ID:HFD03621

E-mail:HFD03621@nifty.ne.jp

NIFTY-Serve のメールなので通常のテキストしか取り扱えません。 バイナリのデータを送る必要がある方は、uuencode を使用して下さい。